あれは約1年半ほど前の、まだ暑さが残る9月の金曜日の夕方のことでした。私は34歳の会社員で、その日も普段通り自分の軽自動車で会社から帰宅途中でした。市内の比較的交通量の多い片側二車線の国道を走行し、赤信号で停車した直後、ドンッという衝撃と共に体が前に押し出される感覚に襲われました。後方から来た普通乗用車に追突されたのです。
幸い、すぐに意識はあり、エアバッグも作動しませんでしたが、首から肩にかけてズンとした重い痛みを感じました。車から降りて確認すると、私の車のリアバンパーは大きくへこみ、トランクも少し歪んでいる状態でした。相手の運転手は40代くらいの男性で、幸いにも誠実な方で、すぐにスマートフォンの操作に気を取られていたこと、つまり前方不注意を認めて謝罪してくれました。
その後、警察に連絡し、実況見分が行われました。物損事故としてだけでなく、首の痛みもあったため人身事故としても届け出ました。その日はそのまま帰宅しましたが、翌日になると首の痛みが強くなり、頭痛や吐き気もしてきたため、整形外科を受診。「外傷性頸部症候群」、いわゆるむちうちと診断され、全治2週間とのことで、そこから数ヶ月の通院が始まりました。
事故から数日後、相手方の保険会社の担当者から連絡があり、車の修理や治療に関するやり取りが始まりました。最初はスムーズに進むかと思いきや、車の修理見積もりに関しては「この部品の交換は必要ないのでは」「中古部品で対応できないか」などと修理費用を抑えようとする姿勢が見え隠れし、少し不信感を抱きました。
さらに問題だったのは治療費と慰謝料についてです。3ヶ月ほど通院した頃、保険会社の担当者から「そろそろ症状も固定した頃でしょうから、治療は打ち切りで」と一方的に言われ、提示された慰謝料も、通院の苦労や事故による精神的ストレスを考えると、到底納得できるものではありませんでした。まだ首の痛みは残っており、医師からももう少し治療を続けるよう言われていたので、途方に暮れました。
その時、ふと自分の加入している自動車保険に「弁護士費用特約」が付いていたことを思い出したのです。年間数千円の掛け金でしたが、こういう時のためかと、藁にもすがる思いで保険会社に連絡し、紹介された交通事故に強い弁護士事務所に相談へ行きました。
弁護士の先生は、私の話をじっくりと聞いてくださり、事故の状況、治療の経過、相手方保険会社の対応などを丁寧に確認した上で、「このケースであれば、まだ治療の継続も慰謝料の増額も十分に可能性があります」と力強く言ってくださいました。弁護士費用特約を使えば自己負担もないとのことだったので、正式に依頼することにしました。
先生が間に入ってからは、交渉の窓口が全て弁護士さんになったため、私が直接保険会社とやり取りするストレスから解放されました。先生は医学的な見地や過去の判例に基づき、相手方保険会社に粘り強く交渉。結果として、当初の予定よりも2ヶ月長く治療を続けることが認められ、最終的な慰謝料も、当初の提示額の約1.8倍に増額された形で示談が成立しました。車の修理費用も、希望していた部品交換を含めて全額認めてもらえました。